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早春読書Ⅱ ─ 村上春樹・向田邦子・司馬遼太郎 ─

モノ・レビュー

マネージャーの松崎です。再び同じ季節に投稿!月日の流れは早い、早いっ!昨年末から2月後半に読んだ本を紹介します。少し長いです。


色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年

村上春樹 文春文庫

mm_blog_01haruki 村上春樹を初めて読んだのは23、4歳の頃だろうか。「風の歌を聴け」に始まり、すっかり村上ワールドに浸ってしまった時期がある。未だに影響を受けた文章になってしまうのだ。(苦笑)ベストセラーはたくさんあるが、短編集も面白い。この「色彩を持たない多崎つくる…」は、年末に文庫本を見つけ、即購入した。若かりし頃読んでいたこともあり、自然に入っていけた。あらすじは次の通りである。 名古屋での高校時代、ボランティア活動をきっかけに、この上なく調和した5人。苗字に色の漢字がある4人と多崎つくる。東京の大学に進学したつくるは、突然理由もなく断絶を申し渡された。その衝撃で生死の境をさまよった。なんとか自力で立ち直り、幼いころから憧れだった鉄道の駅を作る会社に就職することができた。36歳になったつくるは、新しい年上の恋人から「あの頃の出来事が心に掛かっているのでは?」と促された。ここから、事実を明らかにする彼の巡礼の旅が始まるのだ……。 以下は僕(松崎)の話。2年前の冬、こんな出来事があった。学生の頃、同じアパートに住んでいたN君から、岡山で一緒に晩御飯食べよう!と突然連絡があった。大阪からの広島出張を岡山で前泊するという。(都合をつけてくれたのだろう)約25年ぶりの再会だった。詳しく聞くと、3年前、激務により長期入院を余儀なくされ、本当に命の危険を感じたようだ。「このまま死んだらアカン。治ったらお世話になった人に会いにいこう…」ということだった。彼の部屋を一番多く訪れたのは僕だったかもしれない。その年の5月、共通の友人Y君と3人で京都・二条城近くで合流した。それぞれの記憶が微妙に違っていることが、また面白い。確かなことは、僕等はその時代、その季節、その場所に存在したことだ。これはN君の巡礼の旅だったのだろうか……。

思い出トランプ

向田邦子 新潮文庫

mm_blog_02mukouda 向田邦子ついて知っていることは、有名な脚本家であり、代表作に「寺内貫太郎一家」があること、後に飛行機事故で亡くなったことくらいだった。「思い出トランプ」は、ほのぼのとした短編小説だろうと手に取ったが、大きな間違いであった。人間の欲望、したたかさ、弱さを見ることが出来る。直木賞受賞作「花の名前」「かわうそ」「犬小屋」が収録されている。「犬小屋」は、主人公が乗っていた満員電車の中で、向かいに座っていた動物園帰りと思われる一家のご主人が、10年前、犬のお世話をしてくれた魚富のカッちゃんだと気づくことからはじまる話。これが一番読みやすいだろう。

一夜官女(いちやかんじょ)

司馬遼太郎 中公文庫

mm_blog_03shiba 大坂から播州姫路への帰路、医家下沢閑庵の内儀である小若とお供の弥兵衛(やへえ)老人は旅籠で足止めを食っていた。弥兵衛の体調がおもわしくないからだ。小若がいつものように二階から外を眺めていると、街道を歩く若武者と目が合い、胸の動悸を覚えた。ある日、旅籠のご主人に、近日の村の祭りに「一夜官女としておつとめ願いませんか」と持ち上げられる。好奇心旺盛な小若は、弥兵衛の「あれは犠牲(にえ)でござる!」という忠告も聞かずあっさり引き受けてしまう。そして夕方から祭りがはじまった…。 6つの短編のうち、艶っぽい話が半分。「日本人とは何か」を求め続けてきた司馬遼太郎の他の小説とは違い、かなりやわらかい内容だった。やはり司馬遼太郎の本はどれも魅力的なのである。    ]]>